遅々として進展を見ない金物専門店にとって、体質的に新しい業態への転換がどうみても難しい状況下にあることは、金物業界全体の金物店に対する近代化への感性不足と力量不足の結果と考えていいだろう。
金物業界全体で一つの方向性を打出し、新たな流通網の構築によってネットワークされた業態化をもっと早くに模索すべきであった。
つまり、米国に見られるボランタリーチェーン、すなわちエースハードウエアやトルーバリューのような、小売店主導、もしくは問屋主導のグループ化による流通再編成が必要であった。
私がこの20数年間金物業界の実態をつぶさに見てきて得た結論は、金物業界そのものが永年継承されてきた古い寡占化された業種であり、問屋ごとの縦割り構造と古い感覚の業種であることが業界を細分化・私物化させ、近代的な再編成への動きをかたくなに阻止してきたと考えることができる。
全体的な再編成が難しくなってしまった今、私たちは真剣に「個」としての金物専門店のありかたを考えねばならない。
ここでどの金物店も容易に転換できる形態は、私がここ数年提唱し続けている
ハードカテゴリーセンターという業態である。
この転換によって、金物店のサービス範囲を有機的(すでに別項で述べたハードカテゴリーセンターとは何かを参照)にすることで、間口の廣い、信頼度の高い、時流的にも理解されやすい専門店として経営の活性化と必然的妥当性を手にすることができる。
転換というと、全く新しい未知なる業態と考えがちで、斜に構える向きが多いのは残念なことである。
はたしてそうであろうか。 そんなことはない。 いとも簡単なことではないか。
ハードカテゴリーセンターという呼称が大きな店をイメージさせるのだろうか。 いや、いまのままの店舗で十分である。
経営にさらなる機能をとりいれればいいだけだ。 こんな簡単で容易なことが何故できないのだろうか。
機能とは、客に提供できる範囲の拡大(金物店経営者にとっては身近な事象ばかりでアレルギーがない)、コンセルジェ(人間的に知性と知識と暖かさのあるコンサルティング的応対)の徹底化、まずはじめに小商圏を徹底的に自店のドメイン(寡占)にする誰にも負けない気力とその実現、など言ってみればどれもこれも経営の基本である。
あれやこれやと思い悩んでいるよりもこの基本をしっかりと自分にとり込もう。
これが今風に言う「原点の戻ろう」ということだ。 難しいことではない。これを難しいと反論する経営者に、もはや金物専門店としての明日はない。
素直な気持ちで新たに経営を見直そうという経営者には絶好のチャンスである。 勇気と自信をもってハードカテゴリーセンターの実現に邁進しよう。 そのためには、かつての栄光や名誉、経営手法をいさぎよくかなぐり捨てて右脳的発想に切り替えることが必要だ。 時代の大転換期には頭の中をいち早く真っ白にすることが何よりも大切なことである。 これは鉄則だ。 あたかも新しいキャンバスの前に立ち、目を輝かせる画家のように。 ハードカテゴリーセンターへの転換に業界こぞって敬意を表し、みんなで「業界の活性化に」乾杯をしようではないか。